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Monday, March 14, 2022

Iターン夫婦、パプリカで描く夢 5年かけ作った色鮮やかなドレッシング、いよいよ販売へ(Sデジオリジナル記事) - 山陰中央新報社

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中野あおぞら農園(島根県飯南町上赤名)で栽培しているパプリカを使ったドレッシング(150ミリリットル入り660円、35ミリリットル入り330円)

中野あおぞら農園(島根県飯南町上赤名)で栽培しているパプリカを使ったドレッシング(150ミリリットル入り660円、35ミリリットル入り330円)

 生まれ育った神戸市から島根県飯南町上赤名に移住した中野晴美さん(50)。同じく関西出身の夫、良介さん(45)とともにパプリカを栽培する。育てたパプリカのドレッシング作りに取り組み、この春から販売に乗り出す。知らない土地での農作物栽培やドレッシング作りに取り組む思いを聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷農業実習生として飯南町へIターン
 「自然豊かな土地で農業をしたい」との夢を持ちながらパート勤務をしていた晴美さん。飯南町が農業実習生を募集していると知り、2011年夏、家族で初めて飯南町を訪れた。作物の収穫や草取りを体験しながら、空気の良さや景色の美しさを感じたという。晴美さんは「星がくっきりと見えて美しかったのが印象的だった」と言う。小学3年生の長女と「星が降ってくるみたい」と驚きながら夜空を眺めたのを覚えている。

 翌年4月、中野さん家族は飯南町に移住した。会社員として働いていた良介さんも農業に興味を持ち、移住後はそれぞれ町内の農家で2年間の農業実習に励んだ。

島根県飯南町上赤名でパプリカ栽培、加工品の製造販売に携わっている中野晴美さん(50)

▷パプリカ生産スタート、ドレッシング製造への道のり
 飯南町はパプリカの栽培を推進していて、晴美さんと良介さんは2014年、4棟のビニールハウスを借りてパプリカの栽培を始めた。2017年には自宅近くに約10棟のビニールハウスを設置し、「中野あおぞら農園」として本格的にパプリカの栽培に乗り出した。毎年7月下旬から10月にかけて年間7~8トンを収穫し、近隣の道の駅やスーパー、広島県など県内外に出荷している。

 栽培を始めてみると困難なことが出てきた。パプリカは実がなった後もしばらく枝に付けたまま、熟すのを待たなければならない。実がなってから2~3週間、大きさや色の変化を確認しながら収穫のタイミングを待つが、その間に虫に食われてしまうこともあった。

夏の収穫に向けて、毎年春にパプリカの苗を植える。(晴美さん提供)

 さらに規格外のパプリカの取り扱いに頭を悩ませた。大きさや形が販売基準に達していないと、販売用に買い取ってもらえない。自宅で食べたり知人に配ったりしたが、それでも余ってしまう。「もったいない」と感じ、活用法を考えるようになった。

 「出荷できないパプリカを有効に活用できないか」と悩んでいた頃、晴美さんはスーパーでニンジンのドレッシングを見かけた。美しい色合いのドレッシングを前に「パプリカでもできるかもしれない」と思い立ち、2017年、育てたパプリカでドレッシングを試作した。

 知人に配ったり、勤めていた道の駅で試食会を開いたりしてドレッシングを味わってもらい、意見を集めた。調味料の内容や量を調節しながら試行錯誤を繰り返し、2020年、試験的に販売を始めた。今は主に飯南町内の道の駅で販売し、ネットショップの開設準備をしている。

鮮やかな色合いのパプリカドレッシング(150ミリリットル入り660円、35ミリリットル入り330円)

▷イタリアン風味のドレッシング ピザや揚げ物にも
 ドレッシングは赤パプリカ、黄パプリカの2種類。150ミリリットル入りが660円、35ミリリットル入りが330円。パプリカの実をメインに、オリーブオイル、ハーブソルト、レモン果汁などを使用してイタリアン風味に仕上げている。
 パプリカは加熱しても色合いが損なわれにくく、晴美さんのドレッシングも色鮮やかさが特徴。みずみずしいパプリカをペースト状にしていて、パプリカが持つうまみや香りが引き出されている。

 パプリカドレッシングはサラダのほかにもフライドポテト、魚のフライ、チキン、パンなどさまざまな食材に合うという。確かに、パプリカの豊かな香りとほのかな酸味、オリーブオイルの香りのバランスが良く、どんな料理にも合いそうだ。

2018年に晴美さんが試作したパプリカドレッシング(晴美さん提供)

 彩りの良さや香りの豊かさが評判を呼び「ピザソースの代わりに使いました」「サンドイッチに合いますよ」と、ドレッシングを購入した客が使い方を提案してくれる。晴美さんは「ドレッシングを購入した人がプレゼント用にと再び買ってくれたり、人に勧めたりしてくれるのがうれしい」と笑顔で話した。

 晴美さんは「パプリカは家庭で料理に使われることが少ないが、かき揚げ、きんぴら、酢の物、ポタージュなど、さまざまな調理法で楽しめる」と教えてくれた。ピーマンの肉詰めをパプリカに替えてもおいしいという。
 パプリカというとサラダやマリネ、炒め物にたまに入っているイメージだったが、幅広く料理に使えると知って驚いた。鮮やかな色合いのパプリカは、料理に加えると食卓がぱっと華やかになりそう。

中野さん夫婦が栽培しているパプリカ(晴美さん提供)

▷飯南町産品を知ってもらうきっかけに
 農園の管理は良介さん、加工品の製造販売は晴美さんと役割を分担するため、昨年から「イロンデル工房」としてドレッシングの製造、販売の事業化に向けた準備を始めた。「イロンデル」はフランス語でツバメを意味する。
 晴美さんが好きな童話「幸福の王子」に登場するツバメになぞらえて名付けた。晴美さんは「幸福の王子に登場するツバメのように、真心や優しさを配りながら、商品を通じて人を笑顔にしたい」と、名前に込めた思いを話した。

収穫したパプリカ。つやがあり、きれいなベル型が特徴。(晴美さん提供)

 移住して約10年になる晴美さんは「飯南町に来てからさまざまな人と出会い、お世話になったため、恩返しがしたい」と話す。晴美さんは「ゆくゆくは、パプリカをきっかけにほかの飯南町産品を知ってもらいたい」と夢を描く。中野さん夫婦と同じように飯南町で新規就農した仲間はクロモジ、トマト、ショウガなどそれぞれの生産に取り組んでいるといい「パプリカやドレッシングの販売を通して、仲間が飯南町で育てる作物の魅力を広めるのが夢」と話した。物腰柔らかな晴美さんだが、新たな土地で試行錯誤しながら農業に取り組み、仲間と共に前に向かって歩む芯の強さを感じた。
 

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