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Saturday, February 24, 2024

【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】(74)ピザ屋の閉店 :北陸中日新聞Web - 中日新聞

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「居場所」

「居場所」

  • 「居場所」
  • 各国の常連客でにぎわう「トムズピザ」 =ソウルで

◇文・清水 博之◇書・池多 亜沙子

母国NZで再出発 応援したい

 韓国も景気が悪く、当店の周辺でも閉店が相次いでいる。肩こりのために通っていた韓医院(東洋医学で治療する病院)は突然閉業し、一週間後には看板が変わり別の韓医院になっていた。訪れたところ美容方面に力を入れていて、それまでの町医者的な様子からがらっと変わり、きらびやかな雰囲気の女性スタッフばかりに。なのに以前のカルテは勝手に引き継がれており、頻繁に営業案内のメールが来るのだった。

 前のコラムでも書いたが、韓国では、テナントの借り主が営業してきた店を次の借り主に渡す場合「権利金」を要求できる。つまり「店の権利を売る」わけだ。権利金を払った次のオーナーは、現状の什器(じゅうき)や内装を引き継げることはもちろん(私たちのカルテも同様に売られてしまったのだろう)、合意があれば同じ看板を掲げて営業することも可能だ。

 近くにあった人気の中華料理屋は、急に味が落ちた。看板も内装もそのままでオーナーが変わったのだ。レシピも受け継いだようだが、野菜の炒め具合が足りず味に深みがない。私たちは行きつけの場所がまたひとつなくなったことを残念に思った。

 最も悲しい出来事は、今月、行きつけの「トムズピザ」が閉店したことだ。ニュージーランド出身のトムが作るピザは本格的でおいしく、尖(とが)ったインテリア(グーグルマップでの最低評価コメントを額に入れて飾るなど)も素敵(すてき)なお店だった。センスのいいトムに当店の10周年記念のステッカーを好きに作ってもらったところ期待通り最高で、私たちが日本人だからか謎の相撲レスラーと鳥居が描かれていた。

 6年間の営業で行列のできる店となったが、ソウルを離れ母国で店を始めるという。新しいオーナーを探していることは本人から聞いていた。不動産契約が切れる前に買い手が現れ、彼らが権利金を無事受け取れたことは祝福したい。正直、知らないシェフがいるトムズピザには違和感があるが。ともかく彼らの再出発を応援するとともに、いつかニュージーランドを旅する口実ができて嬉(うれ)しく思うのだった。(しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)

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