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Monday, January 13, 2020

米ではドミノ・ピザが「クーポンが読み取れない」で敗訴。ウェブやアプリは障害者が利用しやすいか - BUSINESS INSIDER JAPAN

スマホアプリ

そのアプリやウェブは障害を持った人にも使いやすいだろうか。

shutterstock

ウェブやアプリの情報やサービスは、誰でも利用できる仕様になっているだろうか。

ウェブやアプリなどへのアクセスのしやすさ、製品やサービスの利用のしやすさはウェブアクセシビリティと呼ばれ、身体的条件や年齢、利用環境にかかわらず利用できることを意味する。

全盲でスクリーンリーダーソフトウェア(PCやスマートフォンに搭載されている読み上げ機能)を利用している人にも、ロービジョン(弱視)で画面拡大機能を利用している人にも、聴覚障害で音声が聞こえない人にも、手が不自由でマウスが使えない人にも、LD(学習障害)により文字を認識しづらい人も、健常な人と同じように、誰かの力を借りる必要なく一人でアクセスできるように、ということだ。

視覚障害者はピザを安く買えない?

ドミノピザ

アメリカのピザチェーンのドミノ・ピザの敗訴が意味するものは……。

Getty Images

アメリカでは視覚障害の男性がピザチェーンのドミノ・ピザに対し、ウェブやアプリのアクセシビリティが不十分でメニューを注文できなかったことがADA法(障害を持つアメリカ人法)に違反すると訴えた裁判で、2019年10月、男性が勝訴し、多くの米メディアで報じられた。

報道によると、視覚障害のあるギレルモ・ローブレスさんは、PCを使う時にはスクリーンリーダーを利用しているという。ピザと言えばアメリカでは日常的な食べ物。しかし、ドミノ・ピザのウェブやアプリで発行されているクーポンがスクリーンリーダーに対応しておらず、ローブレスさんが何度試みても結局使えなかった。

ローブレスさんは、ドミノ・ピザが視覚障害者にネットで安く注文できるような対応を取らなかったとして、2016年9月に提訴。2019年6月には最高裁に上告した。

米最高裁は10月7日、ローブレスさんの主張を認め、ドミノ・ピザのウェブやアプリは視覚障害者がアクセスできるように改善する必要があると判断した。

ADA法には障害を理由とした差別禁止、設備のアクセシビリティ改善、合理的配慮などが定められている。近年はIT化の流れにより、インターネットのアクセシビリティへの対応も求められるようになっている。

急増するアクセシビリティ訴訟

ビヨンセ

ビヨンセの公式サイトも「画像ばかりで視覚障害者への配慮がない」と訴えられた。

Getty Images

近年、先進国でアクセシビリティに関する意識が高まるとともに訴訟が増えている。

世界で初めてのウェブアクセシビリティ訴訟と言われているのは、2000年開催のシドニーオリンピック委員会のサイトが訴えられたことだ。

アメリカでは2018年にはウェブアクセシビリティに関連する訴訟件数が約2200件と、前年比でおよそ3倍増となった(アクセシビリティ技術企業UsableNetの調査)。2019年1月には人気歌手ビヨンセの公式サイトも「画像ばかりでalt(視覚障害者のために読み上げられる代替テキスト)も設定されておらず、視覚障害者への配慮がない」という理由で訴えられた。

アクセシビリティにはWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0、ISO/IEC 405000:2012という2つの国際的ガイドラインがあり、日本にもJIS X 8341-3:2016というガイドラインがある。いずれのガイドラインもほぼ同じ内容。ガイドラインには分かりやすさを示す3つのレベル(レベルA、レベルAA、レベルAAA)がある。

Aの数で示される分かりやすさも重要だが、「alt(読み上げられるテキスト)で伝えられる情報に何を入れるか」という議論も見落としてはならない。米ドミノ・ピザ訴訟で争われたのは、商品の割引に関する情報が健常者と同等に伝えられていなかったことだった(この他にもトッピングが選べないという問題もあった)。

公的機関や企業のウェブサイトは1万ページ以上に及ぶのが通常で、全てのページで対応することは現実的ではないだろう。問い合わせのページなど、利用頻度の多い部分は障害のある人もない人も同じように利用できるようにしたい。

日本にもグローバル水準の基準を

英内務省アクセシビリティ啓発ポスター

アクセシビリティに積極的なイギリスの内務省が発表した啓発ポスター。さまざまな障害のためのデザインについて、「すること」「しないこと」がそれぞれ示されている。

UK Home Office Github

日本でも総務省が「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を2016年に公開しており、アクセシビリティ対応が推奨されている。

しかし日本のウェブは視覚障害者にとって、画像に対する代替テキストがなく画像だけで内容を伝えるものだったり、見出しやリストの配置が理解しづらかったり、ダウンロードしたPDF文書がスクリーンリーダーで読み上げられなかったり、ということが多い。

それにより利用したくてもあきらめてしまうことが多いのが現実だ。

視覚障害者だけでなく、他の身体障害者、発達障害者、高齢者も、困りごとを抱えやすい。にもかかわらず、日本では障害者が不便を感じていても、それを伝えることを遠慮しがちだ。

先進国では近年、公的機関・営利企業共にアクセシビリティに関する改善命令が出されたり罰金が科されたりするようになってきた。一方で日本のアクセシビリティの推奨基準は、先進国でも緩いと言われている。特に日本企業が海外展開する際には注意が必要だ。

2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと数カ月。アクセシビリティの進んだ国から来た人々に、日本のウェブやアプリはどのように映るだろうか。


長谷ゆう:翻訳者・ライター。ビジネス、ダイバーシティを中心に取材・執筆・翻訳。発達障害と診断されたが、富士登山や60キロマラソンに成功し、挑戦やダイバーシティの価値を信じる。ブルームバーグでニュース翻訳やダイバーシティ推進に携わった。現在『Coco-Life☆女子部』『ミルマガジン』などで執筆。

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January 14, 2020 at 09:00AM
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