ガソリンスタンド(GS)の減少に歯止めがかからない。経済産業省が30日発表した調査によると、2020年度末の店舗数は約2万9000店とピークから半減した。若者の車離れやエコカー普及に伴うガソリン需要の急減が要因だ。GSは経営多角化などで生き残りを図るが、脱炭素化で今後も需要減は避けられず、ガソリン車向けの供給体制確保が課題となっている。
ガソリン需要は04年度の6148万キロ・リットルから、20年度には7割程度の4523万キロ・リットルまで減少した。これに伴い、国内GSはピークだった1994年度末の6万421店から26年連続で減少が続いている。
全国石油協会によると、GSを経営する事業者の97%が中小企業で、1か所しか運営していない事業者が7割を占める。地方を中心に後継者不足が深刻で、廃業を決める経営者も多い。経産省によると、GSが域内に3か所以下の「GS過疎地」と呼ばれる自治体は2020年3月末時点で332市町村に上る。都市部よりも公共交通機関の少ない地方では、GSの減少が利便性の低下に直結する。
政府は、タンクローリーを駐車場などにとめて給油する移動式ガソリンスタンドの普及を促すなど対策を強化している。自治体が休業したGSを譲り受け、企業に運営を委ねる公設民営方式も増えているが、維持費が課題となっている。
GSの収益源を多角化しようと、石油元売りも支援に本腰を入れ始めた。
東京都渋谷区の出光興産系列のGSでは18年12月、宅配ピザ「ピザハット」の店舗を併設した。相乗効果で来店客の増加を狙い、ピザの売れ行きは同条件の周辺店と比べ好調だという。出光は今後、全国約6400か所のGSで健康診断やデイサービスなどを行う計画だ。
エネオスホールディングスも国内でコンビニ188店、カフェ83店、コインランドリー10店の併設店を展開している。石油業界に詳しい桃山学院大の小嶌正稔教授は「商業施設やカーシェアリングなど地域の移動の拠点として多機能化できるかが生き残りのカギだ」と話す。
政府は1月、軽自動車を含む乗用車の新車販売を35年までに全て電気自動車(EV)やハイブリッド車などの電動車にする目標を表明した。ガソリンのさらなる需要減は避けられない。
政府はEVの充電設備を現在の約3万基から、30年には急速充電器を含め15万基に増やす方針を掲げた。燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションも約170基から1000基に拡大させたい考えだ。
ただ、設置には急速充電器で約800万円、水素ステーションで約3・3億円が必要となり、EVとFCVの普及には時間がかかる見通しだ。GSからEVやFCV向けの次世代型への転換は、「投資に見合うだけの来店が見込めない」(石油元売り幹部)。このため、次世代型は石油元売り大手の直営店などで試験的に導入するにとどまる。
どのように社会インフラ(基盤)としてのGSを維持して、次世代型を普及させるのか。過渡期を乗り切る戦略が政府にも求められる。
からの記事と詳細 ( ガソリンスタンド、26年連続して減少…ピザ店併設やデイサービスで生き残り図る : 経済 : ニュース - 読売新聞 )
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