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Thursday, January 5, 2023

アツアツ戦略でシェアを伸ばす「ドミノ・ピザ」復活の舞台裏!:読んで分かる「カンブリア宮殿」 - テレ東プラス

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早い!安い!美味しい!~注文殺到の大人気宅配ピザ


日本中が熱狂したサッカーW杯カタール大会。期間中、宅配ピザは大人気だった。

生地の上にモッツァレラチーズだけを1キロも乗せた「ウルトラチーズ1kg」(4950円)。一方、この夏に登場した新しい生地は、ミミの部分にセサミガーリックオイルを塗ってあるから、ニンニクのパンチとゴマの香ばしさが楽しめるという。こうしたいろいろな仕掛けで客を魅了しているのが「ドミノ・ピザ」だ。

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その魅力は安くて早い、だけではない。食材へのこだわりが特徴の季節限定の「産直ドミノ」。日本各地の厳選食材をピザに使うことで生産者を応援する。宅配ピザ業界では初となる「産直」をコンセプトにした商品だ。他とは一線を画すこうした戦略で、いまドミノファンが急増している。

ドミノ・ピザはアメリカが発祥。世界90の国と地域におよそ2万店舗を展開、2兆円近くを売り上げる世界一の宅配ピザチェーンだ。

ドミノはベースの味からライバルとは違っている。例えばトマトソース。ライバルは甘さを出すため、トマトと一緒に野菜などを煮込んでいるが、ドミノが使うのはトマトと調味料、オリジナルのスパイス。トマトの酸味を活かしたすっきりした味に仕立てている。

チーズにもドミノならではのこだわりが。ライバルがミックスチーズなのに対して、モッツァレラ100%。乳脂肪が多くコクがあるのに、具材の味を邪魔しない独自の製法をしている。

今年の秋には驚きのキャンペーンを打ち出した。Lサイズのピザを1枚買うと、Mサイズ2枚が無料になる業界初の激安キャンペーンだ。

こんな独自戦略が当たり、長らく業界3位だったドミノ・ピザは2018年、ついに売り上げ・店舗数ともにナンバー1に上り詰めた。

ドミノの躍進を支えているのが、多くのヒット商品を生み出してきた東京・日本橋のテストキッチン。そこにドミノ・ピザ ジャパン代表取締役ジョシュ・キリムニック(44)がやって来た。アイデアを思いつくたび、ここにやって来てあれこれ作っていくらしい。この日作ったのは、冬のサイドメニューとして思いついた、ジャガイモとベーコンにたっぷりチーズをかけたものだった。

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「アイデアを思いついたら、すぐに試してみるのが重要なんだ。仮に失敗してもそれは悪いことじゃない」(ジョシュ)

ジョシュこそ、長らく国内3位に甘んじてきたドミノ・ピザ ジャパンをナンバー1に躍進させた立役者。それを実現させたキーワードが「1秒でも早く客に届ける」だった。

「一番大切なのは、1秒でも早く届けて熱々のピザを食べてもらうことです」(ジョシュ)

1秒でも早く届ける!~知られざるスピード革命


「30分以内にお届け」が当たり前の宅配ピザの常識をどうやって打ち破ったのか。

〇常識破りのスピード改革1「配達を減らす移転戦略」

それを象徴している店のひとつが今年2月にオープンさせた東京・江東区の豊洲店だ。

「実際に店に来てもらって、もっとドミノを知ってもらいたいんだ」(ジョシュ)

これまでフードデリバリーは、賃料の安い裏通りに出店するのが常識だったが、それを表通りに移転し、客の目につく入りやすい店に変えたのだ。狙いは持ち帰りを増やすこと。

同時に、持ち帰りなら全品半額という業界初のサービスも打ち出た。さらに店内にイートインスペースを設置。「究極の出来たて」が味わえるようにした。持ち帰りの比重が増えたことで、ドライバーが足りないという事態が減り、配達時間の大幅短縮が実現できた。

〇常識破りのスピード改革2「熱々を届けるドミナント戦略」

これまでは30分以内の配達を想定して出店していたが、「30分では遅すぎる」と言うジョシュは既存の店舗の配達エリアと重なるようにいくつも出店し、それぞれの配達エリアを20分圏内に縮小させた。この結果、配達時間が短くなっただけでなく、地域全体の売り上げもアップしたという。

〇常識破りのスピード改革3「『走り屋』の導入」

以前のドミノでは、店内のスタッフはピザ作りに専念。できあがったピザはドライバーがバッグに詰めて配達する、というやり方だった。

ジョシュがまず導入したのがドライバーの現在地が分かるGPS。モニター上の青が配達中、オレンジ色は店に戻って来るドライバーだ。ドライバーが店に戻って来るタイミングを見計らって、調理担当がピザを窯に投入する。

そしてこの後に活躍するのが、新たに導入した「ランナー」と呼ばれる専門職だ。焼き上がり、カットが始まると、「ランナー」はピザを保温バッグに詰めて、配達先をドライバーに送信する。次の配達先が届くので、ドライバーはわざわざ店内に戻る必要もない。すると「ランナー」は商品をもって駐車場へダッシュ。ドライバーに渡すまでわずか30秒。この改革で3分の時間短縮を実現させた。

こうした取り組みで、ドミノは全店平均の配達時間を20分に短縮させた。

「常にチャレンジし続ければ、10分での配達も実現できるはずです」(ジョシュ)

予想を超えるピザを作れ!~ヒットを生み出す仕掛け人


ドミノ・ピザが業界ナンバー1に躍進した裏には一人の女性の存在があるという。

11月、大分・杵築市まで食材を求めてやってきたのは、「ウルトラチーズ」や「産直ドミノ」などを手掛けてきたドミノのヒットメーカー、イノベーションシェフの大山幸恵だ。お目当てはゆず。ピザの食材を探して全国を回る大山は今回、ゆずを使おうと考えたのだ。

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「ピザというのは予想してなかったから、ある意味では大変ありがたい」(「大分サンヨーフーズ」・東照寺忍社長)

大山はここで作っているゆずの加工品もチエックしていく。並んでいたのは果汁100%のゆずジュースに、ゆずの皮を砂糖で煮たゆずジャムなど。そんな中、大山の目に留まったのは、ゆずの果汁と刻んだ皮を加えたゆずマヨネーズ。何か閃いたのか、荒く刻んだゆずの皮とゆずマヨネーズを混ぜ合わせた。

「粒々が入っていると見た目にも可愛い」

こうして大山は、自らの目と舌でピザと相性のいい食材を探し出す。10日後には、テストキッチンでゆずを使ったピザの試作が始まった。ゆずをピザに活かそうと、試行錯誤をしながらいろいろな手を打っていく。

ゆずを食べたことがないというジョシュに、新メニューをぶつけてみた。

「甘さと塩気のバランスがいいし、ゆずの苦味も効いていて、すごくおいしいよ。これをクワトロピザにして他の味と組み合わせたら、デザート代わりにもなるんじゃないかな」(ジョシュ)

常識破りのサービス連発~業界3位からの復活劇


宅配ピザはこうあるべきだという枠にとらわれず、ドミノは常に新しいことに挑戦し、成長してきた。1985年に東京・恵比寿に1号店がオープン、日本初の宅配ピザチェーンとなった。ピザに馴染みのない日本で、次々に新しいことを生み出していく。

例えば宅配専用バイク。狭い道が多い日本に合わせ、デリバリー専用バイクを世界で初めて開発した。「30分以内にお届けサービス」を日本で初めて謳ったのがドミノなら、今や当たり前となった1枚で4種類の味が楽しめるクアトロシリーズを初めて作ったのもドミノだ。

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しかし、ライバルが台頭してくると競争は激化。差別化に苦しんだドミノは業界3位に低迷していく。

そんな日本法人のテコ入れにやってきたのがオーストラリア人のジョシュだった。

ドミノ・ピザとの出会いは14歳。アルバイトからメキメキ頭角を表し、来日前は、中東やアフリカなどピザ文化のない国々で新規開拓を任されていた。

デリバリーに馴染みのなかったナイジェリアでは、オープン前日、ピザを無料で配って配達システムを説明するなど、苦労しながらドミノを拡大していったという。

「『難しい』と言うのは簡単だけど、それでは問題から逃げているだけです。解決する方法をどうやって見つけるのか。それが重要なポイントなんです」

こうした手腕が評価され、2017年、史上最年少の38歳でドミノ・ピザ ジャパンのCEOに抜擢された。

当時のドミノ・ピザ ジャパンは、500店舗を突破し、万年3位から2位に昇格。だがそれに満足し、社内には新しいことに挑戦しない風潮があったと、執行役員・柿内宏之は振り返る。

「そこまで成長したので、(出店は)その延長線のスローペースでいいんじゃないかと安堵してたんです」

そんな現状に不満を感じていたジョシュは、幹部を集めた会議で驚きの目標を掲げる。「1週間の注文件数の目標を今の倍の1000件する」と言うのだ。しかし幹部たちは「日本人はピザとかチーズをそれほど食べない」「そんな大量の注文は今の体制ではさばき切れない」と、実現できない理由を次々に挙げて猛反発した。

「優秀な人材がいて、店舗も多いのに、今のままではもったいないと思い、『まず社員の意識を変えなければ』と感じました」

まだ成長できると確信していたジョシュは現場に足を運んで回った。人手が足りないという店にはアルバイトを補充。免許がない人でも配達できるように電動アシスト自転車を増やしていくなど、できない理由を一つ一つ取り除いていった。

一方で、新規客を獲得するため、デリバリーでも半額になるという激安キャンペーンや、トッピングの量を4倍にした「ウルトラ盛」など、ライバルにはないメニューを次々と打ち出す。その結果、「1週間の注文は1000件どころか、2000件を超える店が続出して、中には5000件という店も出てきました」(ジョシュ)

こうした成功体験の積み重ねで従業員の士気も上がり、ドミノはナンバー1の座を勝ち取った。

新たな価値を生み出す~世界一の丸見えへの挑戦


去年オープンした東京・港区のドミノ・ピザ台場店は、どこもかしこもガラス張り。しかも監視カメラまでついている。ここはピザ作りが丸見えになっている店。ジョシュの理想を形にした「世界一透明なドミノ」だ。

「注文をする時の障害を取り除いて、お客が注文したくなるようにしたんです」(ジョシュ)

店では生地を作るところから間近で見られて、生地を寝かせる冷蔵室までガラス張り。すべて見えるから客は安心して買える。

さらにキッチンにはカメラが設置されていて、自分が注文したピザがどう作られているか、ホームページから見ることもできる。

ピザを楽しんでもらうためにできることは何でもやる。それがドミノ躍進の原動力だ。

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~村上龍の編集後記~
ジョシュ・キリムニック氏は、弱冠44歳だが、経歴がすごい。中東、アフリカ、中央アジアなどで副社長を務める。アフリカでは東西南北のさまざまな国で、劣悪な環境のもとピザを焼いた。業界2位の地位に甘んじていたドミノ・ピザに現れたのはそういう人物だった。彼はさまざまなことに着手する。1店舗の受注件数を1000件にすると宣言した。日本人スタッフの目の色が変わった。童顔で、穏やかな人だが、やることは突出している。ドミノ・ピザは、1位の座を譲ることがないだろう。

<出演者略歴>
ジョシュ・キリムニック 1978年、オーストラリア生まれ。1992年、オーストラリアのドミノ・ピザでアルバイトを始める。1994年、ドミノ・ピザ・エンタープライズに入社。2017年、ドミノ・ピザ ジャパンCEO就任。

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