フランスの“すし店”である「スシショップ」が店舗数を拡大している。欧州などで既に190店となり、日本のすしとは一風異なる、新たな「スシ」を提供して人気だ。フランス在住のジャーナリスト、永末アコ氏が取材した。
20世紀の欧州で、スシを知る人は稀(まれ)だった。私がフランスに住み始めた1990年後半、世界各国の文化を紹介した子供向けの人気絵本に「日本は魚を生で食べる」とあり、お皿の上に1尾のグレーの生魚が置かれた絵が載っていた。それはフランスの子供たちを驚かせていたが、私も驚いた。
21世紀の今では、日本人が生魚をそんなふうに食べないことをフランス人は知っている。そして「スシ」を知らぬものはいない。「すし」を知らなくても。
日本の品が他国で見よう見まねで作られるようになり、そのままの日本語が使われるとき、私のように海外に住む日本人はそれをカタカナで名称化する。日本人にとって似て非なるものになっていることが多いからだ。すしとスシも同様である。
フランスのスシには、日本のすしに抱く上質で特別な日に奮発して味わいたい少しばかり高級な食べ物という感覚はない。薄い白味噌のお味噌汁となぜかコールスロー付きの、アジア料理の一種として認識されている。アジア料理と言えば「甘辛」。スシのしょうゆにも甘味付きがあり、それがわさびと混ざり合い、多くのフランス人が好んでいる。
そして、若者たちがおなかがすいて料理をしたくないときの選択肢には、ケバブのイートインやピザのデリバリーと並び、スシのテイクアウトがあるのだ。
フランスでのスシの火付け役と言っても過言ではないのが、ちょうど25年前の1998年にオープンした「スシショップ」である。2023年の今、スシショップはフランス国内に140店、欧州やアラブ(英国、ベルギー、ルクセンブルク、スイス、アラブ首長国連など)に合計50店ある。22年の総売上高は2億2700万ユーロまで成長した。
3つの販売形態を欧州に導入して人気に
それはカリフォルニアロールから始まった。スシショップの創立者である若きグレゴリー・マルシアーノ氏が、学生生活の最後に過ごした米国でカリフォルニアロールを食し、その何にも似ていない食感と味、新しいおいしさに感動。フランスに戻ると早速この味をフランス人にも知らせたいと、幼少時代からの友人エルベ・ルイ氏を巻き込み小さなスシの店=スシショップを始めたのだ。
場所はパリでもスノッブなロンシャン通り。伝統的なフレンチの味を大切にしながらも、新しい美味を追求する人が少なくないかいわいである。
カリフォルニアロールをはじめとするスシのおいしさを一人でも多くのフランス人に知ってもらうには、質を落とさず、コストを抑えることが必要である。そう考えたマルシアーノ氏は、デリバリー、テイクアウト、そしてビジネスパーソンのランチなどに使えるようイートインで販売を開始。販売チャネルは電話と店頭、現在では時代の流れでネットオーダーも多くなったが、これが今に続く販売形態となっている。
マルシアーノ氏によると、スシショップの成功のキーの一つが、この、デリバリー、テイクアウト、イートインの3つを柱として販売したこと。ファストフード店のようだが、日本のそば店のようにオーダーを受けてから作り、配達もする。このコンセプトはそれまでのフランスには見当たらなかったそうだ。
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