おもちゃのパッケージに犬やうさぎのマークが付いていたら、それは優しさのしるし。みんなが「共に遊べるように」と工夫された共遊(きょうゆう)玩具の誕生から今年で三十年。聞き慣れない言葉かもしれないが、実はおもちゃ売り場のど真ん中に並んでいる。トミカもリカちゃんもその仲間なのだ。
トミカには車体を上から押し込むとエンジンがかかるシリーズがあり、目が見えなくても音と振動で臨場感を味わえる。リカちゃんの掃除機はスイッチを入れると、中のゴミがくるくる回り、耳が聞こえなくても電源が入ったことが分かる。
こうした配慮がされたおもちゃは共遊玩具と呼ばれ、一九九〇年の誕生以来、四千二百点以上が認定されている。パッケージに表示される盲導犬とうさぎのマークがその証し。毎年発表される日本おもちゃ大賞にも共遊玩具部門があり、各メーカーが開発を競い合う。
◆「対等に」知恵絞る
第一号を世に送り出したタカラトミー(葛飾区)では、全盲の高橋玲子さん(51)が開発に携わってきた。「みんなが欲しがる、はやりのおもちゃほど共遊玩具にする価値がある」。目や耳が不自由な子もみんなと楽しく遊べるように、当事者として製品に工夫を凝らしてきた。
手で触れば電源が入っているか分かるようにスイッチの「ON」の側に突起を付けたり、音量を突起の大きさで分かるようにするアイデアを出してきた。こうした工夫は社内ルールにも影響を与え、今では品質規定に「目の不自由な人も安心して遊べるように」と盛り込まれている。
四歳で視力を失ってからは、周りの子たちがお絵描きを始めると、ともに遊べない疎外感から一人で輪を外れた。共遊玩具の概念すら生まれていない時代。目が見えない子に配慮されたおもちゃは存在しなかった。
ボールの接近を音で知らせる野球盤で遊んでいたある日。目が見える子に圧勝し「見えないのにすごい」と感服された。障害の有無を取っ払って対等に遊べた体験は心に残り続け、大学卒業後の進路を考えた時にわき上がった。「目が見えない子も一緒に遊べるおもちゃを作りたい」。入社時に抱いた思いが、二十七年後の今、子どもたちの可能性を広げている。
「いらっしゃいませー」。都内の盲学校に通うかほさん(7つ)が、ピザ屋さんになりきって接客する。手にしているのは高橋さんのアイデアが採用されたおもちゃだ。「シーフードバジル」「フルーツ」などピザ生地に乗せるソースのパーツは四種類とも同じ形のため、裏面に○+△の突起を付け、手で判別できるようにした。
店員役のかほさんは、ソースの裏面を順番に触り、注文通りにフルーツピザを差し出した。その様子を見つめた母洋子さん(40)は「少し前までは私が横について補助していたが、子どもだけで遊べるようになり、かほも喜んでいるみたい」と笑みを浮かべた。
気掛かりもある。タブレット型のおもちゃが人気になり、形あるものが画面の中に封じ込められるようになってきたのだ。友達が一つのタブレットに顔を寄せ合う脇で、かほさんが寂しい思いをしているように洋子さんには映る。
共遊玩具と歩んできた高橋さんも、タブレット型のおもちゃが増えている課題に向き合っている。「見えない子が取り残されないようにタブレット型の共遊玩具を早く届けなければ」。少しの工夫が不自由な思いをしている子どもたちに笑顔をもたらす。高橋さんはそう信じて知恵を絞る。
文・加藤健太/写真・中西祥子、兎澤和宣、加藤健太
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