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Saturday, December 16, 2023

大統領選を深く理解するためピザ食べ放題レストランに行く 米国6600キロ第6回 - テレビ朝日

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 フライドチキンもピザもサラダも食べ放題。「これぞ米国」とかじりつきながら大統領選を考えた。その後、満腹で訪れたナッシュビルの酒場も昼からパワフルだった。
(テレビ朝日 デジタル解説委員 名村晃一)

 ニューヨークからロサンゼルスまで、途中いくつもの町に立ち寄りながら6600キロを走破して見えた米国のいま。毎週土曜日と日曜日に配信しています。

東部時間から中部時間に 1時間得してフライドチキンにかじりつく

ピザ
ピザ・ランチは当時19歳だったアドリエ・グロエンウェッグ氏が1981年に創業した=筆者撮影

ピザ・ランチは当時19歳だったアドリエ・フルーネベーヘ氏が1981年に創業した=筆者撮影

 テネシー州ヘンダーソンビルで車のエンジンを止めた時、時間が変わっていることに気付いた。ケンタッキー州ルイビルは東部時間だったが、インターステート65(I-65)を走っているうちに中部時間に切り替わっていた。

 中部時間の方が1時間遅い。東部時間の正午は中部時間の午前11時だ。東から西に移動していれば、時間帯をまたいだ日は1時間多く過ごせることになる。

 米国本土には東部、中部、山岳部、太平洋の4つの時間帯がある。横断すれば少なくとも3回、1時間ずつ得をする機会がある。時間帯だけで言うなら、米国横断は東から西に向かった方が、お得感がある。

 U.S.ハイウェイ31イースト沿いに「ピザ・ランチ」というビュッフェ形式の食べ放題レストランがある。「ランチ」は昼食の「Lunch」ではなく、大規模牧場や放牧場の意味の「Ranch」だ。14州に217店を展開するレストランチェーンは、カウボーイをモチーフにしている。本社のあるアイオワ州では、大統領選の候補者が度々、遊説に訪れることで有名だ。

皿は山盛り、何度もおかわり、ソーダをがぶ飲み…「これぞ米国」

ピザ
ピザ・ランチの企業理念は「世界にポジティブな影響を与えることで神の栄光をたたえる」。経営では政治的に中立だが、この企業理念が保守系の心をとらえている=筆者撮影

ピザ・ランチの企業理念は「世界にポジティブな影響を与えることで神の栄光をたたえる」。経営では政治的に中立だが、この企業理念が保守系の心をとらえている=筆者撮影

 米国勤務以来、大統領選を追いかけているが、ピザ・ランチがニューヨークにはないので立ち寄ったことはなかった。2024年は「大統領選イヤー」だ。どんなレストランなのかをどうしても知りたかった。アイオワ州ではないが、ナッシュビルの近くにピザ・ランチがあることを地図で知り「食べるしかない」と即決した。

 レジで前金17ドル47セントを払ってテーブルに座った。インフレの米国で、この価格で食べ放題は安い。

 主力メニューはフライドチキンとピザ。フライドチキンは通常の味と辛味の2種類ある。ピザは10種類以上並んでいる。サラダバーの材料も豊富で、好みの味をいくつでも作れる。 ソーダも大型カップで制限なく飲める。「米国っぽい」ところがうれしい。

 家族や職場の仲間でワイワイ、ガヤガヤするにはうってつけだ。周囲の客の皿はフライドチキンやサラダ、ポテトが山盛りだ。ピザはタワーのように積み上がっている。

 こういうレストランだと、つい欲張って食べてしまう。客の旺盛な食欲に負けないように、店側も次から次に厨房から作りたての品を出してくる。

アイオワ州では「遊説の名所」に 有権者とぱくつき庶民派アピール

トランプ元大統領
写真上は2016年の大統領選の際に「ピザ・ランチ」を訪れたトランプ前大統領(アイオワ州ウォーキーで2016年1月15日 ロイター/アフロ)。写真下は大統領選への出馬を表明した翌日にピザ・ランチを訪れ、有権者と一緒にピザを食べるペンス前副大統領。支持率低迷で10月に候補者レースから離脱した(アイオワ州ウォーキーで2023年6月8日 ロイター/アフロ)

写真上は2016年の大統領選の際にピザ・ランチを訪れたトランプ前大統領(アイオワ州ウォーキーで2016年1月15日 ロイター/アフロ)。写真下は大統領選への出馬を表明した翌日にピザ・ランチを訪れ、有権者と一緒にピザを食べるペンス前副大統領。支持率低迷で10月に候補者レースから離脱した(アイオワ州ウォーキーで2023年6月8日 ロイター/アフロ)

 ピザ・ランチはアイオワ州内に72店舗ある。アイオワ州出身者は「町の大小にかかわらず、どこにでもある店」と話す。

 アイオワ州は全米で最初に大統領選の候補者選びが行われる地だ。民主党は、2024年の指名争いの初戦をサウスカロライナ州で実施することにしたが、これまで52年間、皮切りはアイオワ州だった。共和党は2024年もアイオワ州が最初だ。

 両党候補者は好スタートを切るためにもアイオワ州を重要視し、こまめに集会を開く。大衆レストランチェーンのピザ・ランチで遊説すれば「小さな町にも足を運ぶ庶民派」をアピールできるのだ。

 近年の大統領選ではバイデン大統領、トランプ前大統領もピザ・ランチに姿を見せ、支持者と握手をした。今回の大統領選でもペンス前副大統領(既に候補者レースから撤退を表明)がピザ・ランチで支持者と対話し、全国的なニュースになった。

 テネシー州の店ではあったが、食事したことでピザ・ランチの雰囲気は良く分かった。米国のみならず世界の命運を握る大統領の選挙も、とどのつまりは有権者一人ひとりの心をどうつかむかだ。食べ放題に興奮してしまう人間の貪欲さを理解できなければ、有権者との距離は縮まらない。

「ホンキートンク」は午前10時に開店し、午前3時までノリノリ

ホンキートンク
ナッシュビルの「ホンキートンク」では生バンドの演奏があっても席料はない。「音楽はすべての人々と共有されるべきだ」との考えからだ=筆者撮影

ナッシュビルの「ホンキートンク」では生バンドの演奏があっても席料はない。「音楽はすべての人々と共有されるべきだ」との考えからだ=筆者撮影

 「これぞ米国」という食事を満喫し、ベルトを緩めてハンドルを握った。これから先は音楽の町への旅が続く。まずはカントリー音楽発祥の地とされるナッシュビルだ。

 旅4日目の10月7日午後3時過ぎに到着した。土曜日の午後、ゆったりとした時間が流れているのかと思ったが、まだ日が高いのにお祭り騒ぎだった。

 ナッシュビルのダウンタウンは、カンバーランド川沿いに公共機関や博物館、企業ビルやホテル、レストラン、バーが徒歩でも移動できる範囲に集まるコンパクトな町だ。ブロードウェイ沿いなどには「ホンキートンク」と呼ばれる居酒屋が並んでいる。

 「ホンキートンク」は、南部や南西部の労働者階級が集う安酒場の呼び名で、ナッシュビルにはこの古いたたずまいが何軒も残っている。連日、正午前(早い日は午前10時)にオープンし、翌日午前3時まで営業している。

 カントリー音楽の都とあって「ホンキートンク」のほとんどで生バンドが音楽を奏でている。酒が回った客は演奏に合わせて思い思いに踊っている。店の中はすし詰めに近い。店の外にいても、大音量の音楽が耳に飛び込んでくる。

 空は快晴。ダウンタウンに集まった市民や観光客は、酒と音楽にどっぶりと浸っていた。

「危険な」ナッシュビルの誘惑 宿泊せず先に進むことを決める  

自転車をこぎながら飲む「走る居酒屋」で盛り上がる女性たち。ダウンタウンの路上では当たり前の光景だ=筆者撮影

自転車をこぎながら飲む「走る居酒屋」で盛り上がる女性たち。ダウンタウンの路上では当たり前の光景だ=筆者撮影

 計画ではナッシュビルに宿泊する予定だった。「ホンキートンク」はかなり魅力的だ。しかし、旅の遅れを取り戻したい気もする。次の宿泊予定地はテネシー州メンフィスだ。ナッシュビルからは車で約3時間20分。これからでも行けない距離ではない。メンフィスに到着すれば計画通りになる。

 「ホンキートンク」で遊ぶか、もうひと踏ん張り走るか。秋とは思えない暖かい風に吹かれながら熟考した。結論は、遊びは置いておいて、先に進むことだった。手堅い判断をしたのは、ナッシュビルの誘惑が危険過ぎたからだ。

トイレ探しに苦労するニューヨークとは別世界の米国にほっとする

メンフィスに向けて2時間ぐらい走ったころだった。夕焼けの空に謎の「物体」を見つけた。いつまでも消えることなく、飛行機雲などとは違った動きをしていた=筆者撮影

メンフィスに向けて2時間ぐらい走ったころだった。夕焼けの空に謎の「物体」を見つけた。いつまでも消えることなく、飛行機雲などとは違った動きをしていた=筆者撮影

 車はダウンタウンの地下公共駐車場に止めていた。真上には高級ホテル、ヒルトン・ナッシュビル・ダウンタウンがあった。トイレを借りたが、日本と同じように気軽に使用できた。ニューヨークでは外出先で気軽にトイレを使えない。犯罪防止のため一般市民が入れるトイレが極めて少ない。ファストフード店のトイレも鍵がかかっていたりする。ニューヨークが暮らしにくいと感じる大きな要因だが、ニューヨークから離れれば離れるほどトイレを探しやすくなっているような気がした。

 ナッシュビルからインターステート40(I-40)を西南西に、ほぼまっすぐ進む。ブルースの故郷、メンフィスに到着したのは午後8時ごろだった。大丈夫。まだ、美味しい食事ができるレストランは開いている。遅れを取り戻したことを祝おう。

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